『ロココのココロ』(Rock The Block Ver.)

                大大大



口ココのココロココのココロココのココロ
ココのココロココのココロココのココロコ
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コロココのココロココのココロココのココ
ロココのココロココのココ口ココのココロ




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      ロココロココロ

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                  大





                口

  口

            口




       CLEAR




『ロココのココロ』

 机の上に、黒縁の丸眼鏡が置かれてある。これをどうにかできないものかと考える。
 ハンマーで叩いてみようか。
 犬の餌にまぜてみようか。
 三角眼鏡とお見合いさせてみようか。
 やはりダシをとることにする。

 グツグツ煮立った鍋の中で丸眼鏡は踊っている。はじける泡が、次から次に妖精へと姿を変える。火を止めると白い湯気が龍に化けて昇っていく。妖精も龍も丸眼鏡をかけている。
 鍋から丸眼鏡をすくい上げると、ぐにゃぐにゃに変形していてもはや丸眼鏡ではない。ひとまずまな板の上に置く。
 とったダシで玉子焼きを焼く。妖精と龍にもお裾分け。美味い美味いと部屋の中でみな踊る。みな綺麗な弧を描く。
 カタカタカタカタとまな板が鳴る。丸眼鏡のなれの果てが、仲間に加えてほしそうにしている。仕方ないなと手に取り、かける。
 途端に視界がゆがむ。私はぐにゃぐにゃに彩られた、けれども華麗なドレスを着た婦人に変身している。目の前には紳士が跪いて、手を差し出している。丸眼鏡がよく似合う。


『麦茶がない』

「世界はコーヒーでできている」
 コーヒー色の空と、コーヒー色の海との間で呟いたその口にきみは熱いコーヒーを注ぎこむ。世界はコーヒーでできている。確かにそれは本当だ。
 茶葉のない世界は生きられても、コーヒー豆のない世界は生きられない。事実きみは人類最後の生き残りである。
 祖国が紅茶連合軍に滅ぼされたと知った時のきみの怒りは凄まじかった。復讐の炎は敵を根絶やしにするだけでは収まらず、空を海を大地を焼いた。焼き尽くした。
 黒い雨がドリップし終えた後には、カップを携えたきみがただ一人笑っていた。
 世界はコーヒーでできている。それだけが世界の真実となった今、きみはふと昔の記憶をたぐり寄せる。はじめてコーヒーに目覚めた日のこと。麦茶だよ、と偽られて飲んだそれは、きみの風景を変えた。人生を変えた。
 祖国を捨てたはずのきみが、なぜあれほどに激しい怒りを覚えたのか。
「麦茶がない」
 きみは呟き、そしてあっけらかんと笑った。
 世界はコーヒーでできている。もはや私は存在しない。遠い日の記憶もいずれきみは焼いてしまうだろう。
 もっときみに飲まれたかった。きみが好きだった。



『気体状の学校』

 ガスクールは冷たい病に冒されている。身体をあたためつづけていないと今にも凍えてしまう。故にいつでも人肌を求める。誰彼かまわず抱きしめる。しかしどれほど抱きしめても抱きしめても、ほんのひと時のここちよい熱が失われれば後には冷たい抜け殻が残るばかりだ。癒えない病に途方にくれながらガスクールはまた一人を抱きしめる。教師であるという。らしからぬ刺青がその肌に彫られている。仮初めのあたたかさを得るのにどの肌も変わりはない。いつものようにしっかと抱きしめる。いつものように、したたる涙や汗が凍り、床に落ちて砕ける瞬間であった。おんなじようにして教師の身体までもが弾け、跡形もなく霧散したのである。ただ刺青の破片(英字の刺青であった)だけがひらひらと舞っている。そのひとつがこちらに向かってくるのを受け止める。H。
 ガスクールは霧散する。霧散した己の隅々にまで充満する始業ベル。教師が教鞭をふるっている。冷えが治まっている。



『ローリング・サンダー』

 《トミー・ディー・ディー・ジョニー・ジョーイ・ジャニス・ジミ・ジム・イアン・ブライアン・カート・シド・シド・デヴィッド・ロバート・ジーン・フレディ・エディ・バディ・リック・リチャード・リヴォン・リッチー・レイ・レイ・ルイ・ルイ・ロイ・ルー・マーク・マイケル・マイルス・オーティス・エルヴィス・ボー・サム・ジョン・ジョン・ジョン・ジョー・ジョージ》

 ピンタゾウガメ最後の一頭であったロンサム・ジョージは、その死後に召された天界で、神の名を授かった。
 従者の踏み鳴らす足音にのり、《轟》はゆっくりと首を伸ばし、神のシャウトをとどろかせる。



 超短編イベント投稿作。テーマ:絶滅動物


『一夜の宿』

 テントウムシを待っていたのに、飛んできたのは金星だった。のばした指にぴたっと止まり「よろしくっ」というが早いか勝手におれに上がりこむ。回っていなくて良いのかと訊いても「あら、女神はお邪魔? やっぱり淑女がお好み?」とはぐらかす。そういう問題ではないのだが、「まあまあ、一晩くらい休ませてよ」とお構いなしにくつろぎ始める。仕方ない。いや待て。おまえの一晩っていったら確か、
「じゃ、夜が明けたら起こしてねっ」
 そんなわけで奴さん、おれのからだを寝床に今もすやすや眠っている。おかげで左の金玉が重い。



『ヒーナ・マッツリーナの憂鬱』

 五弦ベースのサニー・カンディオと三弦バンジョーのゴネイバ・ヤンシーを引き連れてヒーナ・マッツリーナは唄をうたう。太鼓たたいて唄をうたう。唄は羽ばたき桃の木の枝から枝へ花を咲かせる。けれどもヒーナ・マッツリーナは悩んでいた。
 音楽性の相違。
 噂には聞いていたが、まさか本当にそんな理由で解散するとはおもってもみなかったのだ。サニー・カンディオには梅の木派の道に進みたいと云われ、ゴネイバ・ヤンシーは桜の木楽団に引き抜かれた。二人に去られ、ヒーナは途方にくれている。このまま一人で続けるか、新たな仲間を見つけるか、いっそ唄を諦めるか。彼女は岐路に立たされていた。
 まだ花のつかない桃の木の根元に座り、ヒーナは心許ないおもいを託すように太鼓をたたいてみた。ぼんぼりと鳴る太鼓の音。桃の木の枝がかすかに揺れる。続くはずの伴奏はなく、それでも枝は唄を待っている。 
 ヒーナはそっと、唄ではなく口笛をふいた。
 枝のつぼみが戸惑いを見せる。どうすればよいのかわからないというふうで、かろうじて三分咲きとなった。自らの臆病さを明かされたようで、ヒーナは顔を赤くした。
 と、不意にとても強い風がふいた。突風は枝のひとつを折り、吹き飛ばした。くるくると回転し、やがて無惨に落ちゆく枝をヒーナは心苦しく見つめた。
 その時である。今にも地に落ちようとしている枝についていたつぼみが突然、唄をうたい始めたのだ。自らうたうつぼみはぱっと花咲いた。そして羽ばたき優雅に飛んでいった。途端に、桃の木にとどまる残りのつぼみ達もいっせいに唄をうたい始めた。大合唱を響かせながらつぼみ達は次々に花咲き、そして飛んでいった。
 ひとり残されたヒーナはしばらくその場を動けずにいたが、やがてすっくと立ち上がった。もはやその目に迷いの色は見られなかった。
 ヒーナ・マッツリーナは唄をうたう。太鼓たたいて唄をうたう。唄は羽ばたき、さんさんとヒーナ自身の花を咲かせる。



『一九六二年二月二〇日に生まれた男』

 一九六二年二月二〇日に生まれた男が、
 うたったうたを、きいている。
 たましいはいったい、
 いつ何時、
 どこで伸びた夏草の露に濡れて光っているのかを、
 知っているうたを、きいている。

 虚無や死や憂鬱や
 退屈や別れや諦めで
 苔むす石のその上で
 うたは、煙草をふかし笑っている
 あまつさえその石を転がして
 その転がりの上で踊っている
 ピエロより、あたたかく
 ピエロよりも、けだかく

 地球はまるいんです、
 地球はまるいんです、
 どこからでも、右ななめ後ろからでも、
 まるいんです、
 触れもします、
 割れもします、
 蹴ってあそんでいいんです、
 理論と観念でまるくあるのでなく、
 まるい実在がそこにあるんです、
 一九六二年二月二〇日に生まれた男が、
 うたったうたが伝えてきたのは、
 たとえばそんなことだった。

 目ん玉を覆う
 うす膜が破れ
 左右を囲う
 壁は崩れ
 世界はくっきりと色があり
 道は元からないとわかり
 ただそれだけの
 うつくしい荒野
 ぽつんとしながら
 うたは、そこでありったけ鳴る
 ただそれだけで鳴るだけ鳴る
 ただそれだけをきいている 

 あなたには、立つアシがある。
 あなたには、想うアタマがある。
 あなたには、語るコトバもあるか。
 あなたには、あなたがあるか。
 あるのか。ないのか。
 なければ、どうするか。
 どうなるか。どうあるか。
 どうどう、どうどう、
 やるか。巡るか。
 一九六二年二月二〇日に生まれた男が、
 うたったうたが問うてきたのは、
 たとえばそんなことだった。

 一九六二年二月二〇日に生まれた男は、
 今も生きてうたっている。


 マーシー。


 ありがとう。



『永遠の舞』

 風前の灯であった。生存競争に敗れて住処を失ったヒイロペンギンが、からがら南極へと到達した時、群れはもはや六羽を残すのみとなっていた。怖れる天敵の姿も見えず、平穏とおもわれた新天地も、しかし安住の地とはならなかった。あるいは代を重ねていけば、適応もして楽園となり得たのかもしれない。そんな永い時を歩むには、極寒の大地は彼らにとってあまりに厳しすぎた。
 陽が沈み、昇るまでに一羽が倒れた。次の日没までに一羽が力尽きた。流氷と共に一羽が消えた。オーロラの下で一羽が眠った。そして群れの頭であったロッソとその妻クレナが残った。
 吹雪が訪れる。クレナはぐったりしている。堪える力はもはや無い。朦朧となりながらロッソはクレナに求愛する。
 羽を広げてパタパタさせる。振り絞るように高くいななく。クレナが小さく呻く。ロッソはさらに羽を広げる。よたよた前進しては後ずさる。えっちらおっちら回る。クレナの首根をくちばしで優しくつまむ。クレナはもう動かない。ロッソはなおも羽を広げる。吹雪がすべてを呑み込んでいく。

 南極の厚い氷の中に、決して消えない炎がある。ゆらゆらゆらめく形のまま消えない炎がそこにある。



『クスクスの謎』

 不穏の影から生まれるほんのり小さな粒。他生物に寄生する、耳から入って口からこぼれるそれはクスクスと呼ばれる。
 クスクスは大きく分けて七つある。F型(フライング・クスクス)、C型(クライミング・クスクス)、B型(バーニング・クスクス)、D型(ダンシング・クスクス)、G型(グラップリング・クスクス)、E型(エキサイティング・クスクス)、A型(アクセラレイティング・クスクス)である。
 クスクスに寄生されたもの同士は多くの場合で惹かれあう。険悪になる例もないではない。クスクス同士にも相性がある。
 稀に、複数のクスクスを体内に飼うものがある。他より秀でた能力を発揮することが多いが、やはりクスクス同士の相性による。
 クスクスの発見は偶然起こった。ある昼下がり、あるものが口笛を吹いていると、不意にその口笛がバチバチとスパークしながら飛んでいき、前方の壁にぶち当たった。壁は焦げつき、その焦げ跡から三つの粒と、肩を震わすようなハーモニーが転がり落ちた。C型、F型、G型のまずは発見であった。
 クスクスが離れる時、宿主はほんのり小さな笑みをこぼす。そして消息を断つ。その行方は未だに誰にもわからない。


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