『第二印象』

 ベルが鳴った。目の前が真っ暗になった。まんまの意味だ。暗闇。何にも見えない。
 じっと身構えていたら、すぅーっと今度は目の前に顔が現れた。白い顔。いかにも幽霊といった感じの無表情でこっちを見て、おもむろに口を開いた。
「またお会いしましたね」
 はて。まったく覚えがない。よくよく見れば整った美しい顔立ちだ。だからだろうか、覚えてないのは。黙って考えているうちに、その顔はふっと消えてしまった。
 再び闇に取り残される。こまった。その場へ座りこみ、さっきの白い顔を思い浮かべてみる。あれは誰だったのだろう。
 するとだ。闇に浮かべたその顔が、ほのかに灯りとなって周囲を照らしだした。ぼんやりと手前にドアが見える。よし、と直行でノブを掴んだ。回る。思いきり引いた。
 目がくらむ。ドアの向こうは白い部屋。真ん中にベッドが、その上には全裸の女が横たわっている。その顔は、さっきの顔だ。女だったのか。眠っているようだ。
 またもベルが鳴り、真っ暗になった。ただ女の残像のみ、うっすらと光っている。残像はゆっくり起き上がり、こっちを見た。整ってはいるがよくある顔だ。それが今度はにっこりと笑った。
「はじめまして」

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『ぐしゃ』

 クマムシじゃねぇまだ生きてるぜ
 つらぬけ新型キャデラック!!!!!

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『Death Letter Blues』(Original Version)

 結びには「死んでます」としたためる。
 ママ。届けに行くよ、今。

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『サマ化け』

 というとあれか、古くなった傘の妖怪(それ、傘化け)
 悪い子はいねがー(それ、なまはげ)
 あちゃーぜんぜん読めなくなってるわ(それ、文字化け)
 ごはんには結局これが一番(それ、玉子かけ)
 てんぷらも美味しいよね(それ、さつま揚げ)
 魚も塩がきいてて(それ、新巻ジャケ)
 けっこうけだらけ(猫はいだらけ)
 昭和の爆笑漫才(それ、ダイラケ)
 中野ブロードウェイ3Fの(それ、まんだらけ)
 大穴きたー!(それ、万馬券)
 冨樫のことかー!(それ、働け)
 さおやーあー(それ、さおだけ)
 ブルーレット(それ、置くだけ)
 月曜日は(市場へ出かけ)
 月曜日は(ウンジャラゲ)
 幸せーって(何だっけ)
 時の流れに(身をまかせーそれ、テレサ・テン)
 ……はぁー(るばるー来たぜそれ、函館)
 やはり無理して呑むもんじゃないな(それ、ヤケ酒)
 すこし摂生しないとダメだよな(それ、いい心掛け)
 きっとこの暑さで疲れてるんだ(それ、夏バテ)
 だから変なのにも憑かれるんだ(それ、もののけ)
 何かいちいち突っ込んでくるし(それ、オマエがボケるからやんけ)
 では改めて訊くが、誰だキサマ(おれ、サマ化け)

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『革命』

 変わろうとおもった。あなたのために。変えようとおもった。笑顔のために。
 昨日の晩の豆腐のサラダをおもいだす。おいしかった。のこさず食べた。その記憶をそっと消す。腹がぐうと鳴る。
 目の前に豆腐のサラダが再生される。箸でそっと口に運ぶ。崩さぬように。レタスやエビも丁寧に運ぶ。音も立てずに。のこさず食べて胸張ってわらう。その記憶を再びそっと消す。腹がぐうと鳴る。
 また目の前には豆腐のサラダ。箸でそっと口に運ぶ。あなたの口に。腹がぐうと鳴る。
 豆腐のサラダをそっとあなたの口に運ぶ。あなたの父親に。あなたの恋人に。
 あなたはわらってくれるだろうか。あなたの父は。恋人は。
 頭を箸でかき混ぜてしまおう。
 次にはそっと口に運ぼう。
 次にはそっと食べてもらおう。
 腹がぐうと鳴る。
 胸張ってわらう。
 ぼくは変わる。
 ぼくが変える。
 あなたのために。
 笑顔のために。

『結晶』

 綿棒の先には、面倒が詰まっている。
 救いがたいほどの甘えんぼうは死ぬとめんぼうになる。ありとあらゆる甘えの汁をいたずらに吸ったその骨はぐにゃぐにゃにやわらかい。ひとしおにやわらかいひとすじがゆきゆきてそれになる。骨となってなお甘えんぼうは愛しい者の奥へともぐりこみ甘えに甘えたうたをささやくのだ。うたを妨げる不純物をせっせと掻きだしながら。

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奴らのシャッポを脱がせるか

 コンニチハ、脳内亭です。

 この書き出しでの更新もじつに久しぶりである。皆さんお元気ですか。
 さて今日は他でもない。アレです、「帰ってきたハガキのコーナー」です。いやー、久方ぶりのハガキが届いたのですよ。3年ぶりですよ。むーんさんから戴きました。ありがとうございます。

「帽子を部屋が埋まるほど持っているコウジさん、こんにちは。子牛はなぜドナドナされていくのですか?」

 はいはい。えーそうですね、なにしろ坊主頭ですから、髪の毛の代わりに頭を防護するものが必要になってくるのですよ、正味な話。なもんでね、まー部屋が埋まるほどは云いすぎですけど、たくさん持ってますよ、ええ。ほらご覧なさい、このコレクション。綺麗なもんでしょう。目もハットくらむとはこのこと……久々ですからね、前菜はこれくらいにしときます。

 で、何でしたっけ。ああ、子牛がなぜドナドナされていくのかですね。これはね、なかなか意味深です。まず、なぜ子牛なのか。子馬や子羊ではダメなのかと。ましてや子コンドルは論外なのかと。そうなんです。子牛である理由があるんです。ええ。
 ところでですね、この子牛、ドナドナされていく時には帽子を被らされるんですよ。さて、牛に帽子を被せてみます。どうなりますか。はい、「牢」になりますね。じつはこのドナドナ、子どもが牢屋に入れられる唄なんですね。さあ意味深になってきました。
 じゃあですよ。ドナドナとはどういう意味なのかと。そういう話になってきます。いいですか、ここから先の話は、後戻りできません。僕も覚悟して書きます。
 単刀直入にいきますよ。これはね、「ドナルドVSドナルド」の略なんです。つまり、某道化と某家鴨です、ええ。奴らはね、どちらも人攫いなんです実は。あいつらの邪悪な面構えを見れば明らかでしょう。つまりドナドナとは、人攫い同士の血で血を洗う抗争を記した唄なんですね。実はね、ある一人の頭の良い子どもが、連れ去られるときに奴らの手がかりとなるように、唄に暗号を込めたわけです。奴らはどちらも世界的な大組織です。下手に探れば命の保障はないのですが、勇気を持って書きます。さあここからです、歌詞ひとつひとつに込められた暗号を……あれ、こんな時間に来客なんておかしいな。すいません、ちょっと席を外しますね。じゃあ、僕の命がのこっていれば、次のハガキまで、ごきげんよう。

『スイーツ・プリーズ』

 マザー・ファッカー!!

『法螺と君との間には』

 ひざを抱えて歩いてる。と、云ったら「嘘つき」と笑われた。
 ひざを抱えて歩いてみせる。

『天空サーカス』

 泣くのを忘れてしまいます。泣くのを忘れてしまいます。泣きたいきもちを忘れるんでなく、泣くのを忘れてしまうんです。
 ひとつの朝でありました。ぼーんと鐘が鳴りました。なるほど昇っていくんだな、あれよあれよとからだも溶けた、さながら水彩の絵の具のような、しんみりとした存在のまま、尾をひき昇っていきました。
 彼方此方を見わたせば、にじむまなこに映るのは、赤いろ黄いろ黒白桃いろ。やはりにじんだ尾をひく様は、青いテントにぶらんと下がる、まるでぶらんとつり下がっている、さてはブランコと見えました。
 それが故にか図らずも、つられたんだか図らずも、ぶうらんころんと宙返り、にじんだ尾へとひるがえり、ちぎれんばかりに無心につかむ、つかんだ最中、おもい描くはかわいい人の拍手、喝采。
 九つの子がおりました。幸せといえばいえました。それではなぜと問われて返す言葉もないのがほんとうで。
 ぼーんと鐘が鳴りました。ひとつの朝でありました。あれよあれよとからだもこごる、しんみりの様は変わらないけれど……
 帰ることにいたします。かわいい人の待つところへ。

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